世界は悲惨でいっぱい映画『ナイチンゲール』感想文
女性主人公の変形西部劇構造はコーエン兄弟の『トゥルー・グリット』、アボリジニの青年とのロードムービー的な側面は『WALKABOUT 美しき冒険旅行』、と言っている人がいてなるほどと思ったが、俺としてはそれに加えて「最初っから特別完全版の『地獄の黙示録』」と言いたい。
アンチ・シネフィルなゆるふわ系にわか映画ブログ。
女性主人公の変形西部劇構造はコーエン兄弟の『トゥルー・グリット』、アボリジニの青年とのロードムービー的な側面は『WALKABOUT 美しき冒険旅行』、と言っている人がいてなるほどと思ったが、俺としてはそれに加えて「最初っから特別完全版の『地獄の黙示録』」と言いたい。
CGワンちゃんのバーナードくん、中に人間が入っているようかのように動くのでハリソン・フォードの出演を念頭に置いて観るとハン・ソロとチューバッカの出会いをチューバッカ目線から描いたスターウォーズの外伝に思えてしまう。
ブルース、ゴスペル、ショットガン、湿地帯、盲目の黒人牧師、はみ出し者二人のロードムービー。超アメリカ。超アメリカン・ニューシネマ。
車移動感覚の星間移動、宇宙への畏怖を微塵も感じさせないスケール感のなさ、バカみたいにバタバタ死んでいく宇宙エリートたち…のB級感と反比例する四次元的な宇宙船造型や古代遺跡っぽい火星基地の美術のすばらしさ、無音多用の音遣いのおもしろさ。なんだこりゃとは思うがたのしかったです。
こういう芸を楽しむ映画というのは邦画でまず見ないしわりと世界的にも絶滅危惧種っぽいので得した気分、なによりこないだ観た『死霊の盆踊り』効果もあって芸人っていいなぁのしあわせ感に浸れてたいへんよかった。
妻夫木聡の反社ウェーイ芝居、素晴らしかったなぁ。何も考えてないようで常に獲物をサーチしている風のふらついた挙動、ヘラヘラ笑ってのウザ絡みからのキレへのナチュラルな移行が見事で見事で、こういう人が入江に吉本芸人を呼ばせてたんだろうなぁと入江に吉本芸人を呼ばせていた人を知らないのに確信してしまう。
ポスター見てバッキバキにキマった映画にキマっていると思ってましたが観たら『ピューと吹く! ジャガー』みたいなゆる系の旅映画でした。おもしろかったです。
観光名所あり遊園地ありカーニバルありオペラありのそしてもちろん思わぬ恋と出会いあり。謎の敵集団エレメンタルズと新ヒーローのミステリオのバトルも修学旅行の良いスパイス、あぁ楽しい修学旅行だった!ミステリオ大好き!
監督ジャック・オーディアールの前作『ディーパンの闘い』が超硬派な難民ドラマだったから落差がものすごい。これじゃあまるで『働くおっさん劇場』じゃないですか。ジョン・C・ライリーが野見さんじゃないですか。超しあわせな映画だな。
よくできた誠実な映画。実話系アメリカ映画によくある鼻白みがちなエンドロールのご本人映像も、こういう映画、こういう使い方なら微笑ましい。